使用しているレザーについて


使用しているレザーについて

こんにちわ、デザイナーのツダです、今回はストレンジアーティファクトで使用しているレザーについて解説していきたいと思います。

とその前に2024年3月よりJIS規格1において「レザー」「」について「レザー」や「」といった名称を用いることができる製品は「動物由来のものに限定する」と規定されました。

どういうことかというと最近目にするようになった「キノコ」や「サボテン」などを使ったレザー風の素材は「〇〇レザー」「〇〇革」と呼べなくなりました。

ボンデッドレザー」「リサイクルレザー」「再生革」なども同様にその名称は使えなくなり「比較繊維再生複合材」と表記することが定められています

昔からなじみのある「フェイクレザー」や最近増えてきた「ヴィーガンレザー」などの動物由来ではない不織布や特殊不織布、合成樹脂などを使った革に似せて作られた素材も「合成皮革」「人工皮革」と表記することになっています。

ちょっと間違えそうになるのが「エコレザー」で、こちらは環境に配慮して製造されている動物由来のものなので。まぎれもない革、レザーです。

革、レザーというもののこれからの立ち位置にものすごく大きな影響を与えそうな出来事だったので少し取り上げてみました。

■ハンドダイレザー

革の硬さエイジング
ブラック★★★★☆★★★★☆
ブラウン★★★★☆★★★★☆
ジェットブラック★★★★☆★★☆☆☆
←柔 硬→←しにくい しやすい→

使用している製品:レザーアーマーリング、スタッズブレスレット

ストレンジアーティファクトで今一番推しているレザーがこの「ハンドダイレザー」で特徴を箇条書きすると

  • 1.3-3.0mm厚の牛革
  • ベジタブルタンニン鞣し
  • 芯通しの染色
  • 銀面にハンドダイ
  • 厚みによって違う最終仕上げ

こんな感じになります。 1つずつ見ていきましょう

ベジタブルタンニン鞣し

これはタンニンと呼ばれる植物に含まれている渋みの成分で皮を鞣したものです、動物から採取された皮はそのままでは腐ってしまい素材として利用ができないので、「鞣し」という作業が必要になります。 簡単に説明すると、タンニンが皮のタンパク質とくっついて防腐性が得られるというものです。 ベジタブルタンニン鞣しの特徴は「良くも悪くも変化しやすい」です。 染料で染色されたものは色も変わりやすいですし、シワなども付きやすいです。

人によって感じ方が違うので、この特性は「エイジング」を求める方には最高の特性ですが「なるべく元の状態を保ちたい」という方には向いていないかもしれません。

芯通しの染色

ベジタブルタンニン鞣しで仕上げられた革は何もしなければ肌色の状態で、いわゆるヌメ革と呼ばれるものになります、このヌメ革に染色や加脂、仕上げを施すことで製品の革になっていきます。

芯通しの染色というのはその染色の工程で革の芯まで色を付けることです、なので芯通しの染色がされた革は断面もヌメ革の肌色は出ておらず染色された色になっています。

メリットとしては革の裁断面にインクなどでの染色を施さなくても製品の統一感が出る事で、一般的なデメリットは革が若干硬くなることですね(鞣しの技術やどういう方向の革に仕上げたいかなどによって変わってきます)

一般的なと書いたのはまさにこれでアーマーリングに使用しているハンドダイレザーは1.3mmという厚みなのですが、これをオイルが多く含まれているレザーや柔らかく仕上げられた革で制作するとふにゃふにゃになってしまうので革が若干硬くなるというのは当ブランドにとってはメリットでもあります。

銀面にハンドダイ

銀面(ギンメン)というのは革の表側のことで裏側のことは床面(トコメン)と呼びます、ハンドダイというのは手で染めたものということです。

先ほどの芯通しの染色というのは大きなドラム缶状の機械で染料と革を丸ごと撹拌して染色していますが、その染色して仕上がってきた革に人の手でひとつひとつ染料を塗布していく工程になります。

ブラック、ブラウン、ジェットブラックそれぞれ違う染料を使用して染めています、「ブラック」と「ジェットブラック」は同じブラックですが「ブラック」のベースは茶色の革、「ジェットブラック」のベースは黒の革となっていて、下地の色を反映してブラックはほんのり茶色がかった黒、対してジェットブラックは漆黒といった違いがあります。

厚みによって違う最終仕上げ

レザーアーマーリングに使用しているハンドダイレザーは1.3mmと2.0mm、ブレスレットは3.0mmを使用しています。

1.3mmと2.0mmのレザーでは染色後の最終仕上げでドライオイルと呼ばれる乾燥するオイルを使用しています、張りのあるレザーに仕上がり、凸部分の光沢が出やすくなります。

3.0mmのレザーでは最終仕上げにニートフットオイルという動物由来のオイルを浸透させた後に、ラノリンや蜜蝋を混合したワックスで仕上げています。

■ピグメントレザー

革の硬さエイジング
ブラック★★★★★★☆☆☆☆
ブラウン★★★★★★★★☆☆
←柔 硬→←しにくい しやすい→

使用している製品:レザーブレスレット、レザーリング

  • 2.0mm厚の牛革
  • ベジタブルタンニン鞣し
  • 芯通しの染色
  • 銀面に顔料を塗装

以前から使用している姫路の国産革でベジタブルタンニン鞣しや芯通しの染色といった部分はハンドダイレザーと同じですが決定的な違いは

銀面に顔料を塗布

これです、染料は革に浸透して革の表情を変えずに着色しているに対して顔料というのはいわゆるペンキのようなもので革の表面を覆うようなイメージ、お化粧している感じです。

ペンキのようなもので覆ってしまっていてはエイジングしにくいのでは?

答えはイエスでもありノーでもあります。

まずはイエス(エイジングしにくい)の部分、顔料で革を覆ってしまっているためベジタブルタンニン鞣しの良さであるエイジングしやすい(色が変わりやすい)という点ではほぼ色は変わらないと思っていただいて大丈夫です。

ではなぜノー(エイジングしやすい)なのか、それは「顔料は革の表面に乗っかっているだけなので剥がれる」ということです、特に当ブランドのピグメントレザーは薄く顔料を乗せてあるため剥がれるというエイジングは起こりやすいです。


ダブルバックルブレスレットブラウン

このように折れ曲がったり摩擦が多い部分では顔料が剥がれて染料で染められた下の色が出てきます、顔料仕上げのヴィンテージのレザージャケットなどでもこういったエイジングを見かけます。

この革を3.0mmではなくて2.0mmを使用しているのもシワなどの凹凸が3.0mmのものよりつきやすくよりヴィンテージライクなエイジングをするためです。

■クロムエクセル

革の硬さエイジング
ブラック★★☆☆☆★★☆☆☆
バーガンディ★★☆☆☆★★★★☆
←柔 硬→←しにくい しやすい→

使用している製品:レザーブレスレット

クロムエクセルはアメリカのホーウィン社というタンナーが製作している革で、ワークブーツ用として100年以上前に誕生しました、特徴は

  • 2.3mm~2.5mm厚の牛革
  • コンビ鞣し
  • オイルレザー
  • プルアップ
  • 丘染め

といった感じでまたもや聞きなれない言葉の連続ですが一つずつ見ていきましょう

・コンビ鞣し

こちらは先ほどから登場しているベジタブルタンニン鞣しという鞣し方とクローム鞣しという化学薬品を使った鞣し方を両方使った鞣し方です。

クロム鞣しの特徴は水に強い、軽い、柔らかい、コストが安い、そしてそのクローム鞣しを行った後に化学薬品であるクロームを抜いてタンニンで鞣し直すのがコンビ鞣しです。

コンビ鞣しは柔らかく、強靭で、さらにはエイジングもタンニン鞣しのようにするというタンニン鞣し、クローム鞣しのいいとこどりといった感じの革です、もちろんオリジナルの鞣し方のようにはいきませんが(エイジングするとは言っても100%タンニン鞣しのようにはいかない)

・オイルレザー

クロムエクセルは牛脂、蜜蝋、植物性脂,魚脂などの4種類以上の油脂をブレンドしたオイルをたっぷりと含んだレザーで、このオイルのおかげでほぼオイルメンテナンスフリーで、ものすごくしなやかで柔らかいレザーになっています。 デメリットとしてこの豊富なオイルのために革の銀面にはスレ傷がつきやすいです。

・プルアップ


これは先ほどのオイルがたっぷり含まれていることで起こる現象で、ブラックを除き革を裏から押したりすると圧力がかかって画像のようにオイルが逃げて、白っぽい感じに色が変化します、この現象のことをプルアップと呼びます、プルアップすることで圧力のかかっているところとかかっていないところで色の濃淡が生まれてすごく豊かな表情を見せます。

ブラックにはこのプルアップは起こりませんが、その代わりに表層の黒の染料が経年とともに擦れて薄くなり下地の茶が出てくる(いわゆる茶芯)現象が起こります。 レザー好きが虜になってしまうレザーでもあります。

・丘染め

クロムエクセルは芯通し染色ではなく丘染めと呼ばれる銀面のみに染料を施したレザーになります、なのでブラックを含むすべてのカラーで床面(革の裏側)のカラーは同じになります。 

■最後に

ストレンジアーティファクトで使っているレザーの紹介、いかがだったでしょうか? 鞣し方や染色方法オイルの有無で同じ牛革でも全く表情が異なるのでレザーそのものへの興味は尽きませんね。(ホースハイドの紹介を忘れてました)

これからも新しいレザー追加していきたいと思ってます。

それでは今回はこのあたりで、また次回お会いしましょう。

  1. JIS K6541:2024 ↩︎

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